調剤薬局業界の現状
医薬分業の本格的な始まりは昭和50年ごろと言われています。
当時、ほとんどの病院や診療所では院内調剤が行われていました。
しかし、処方箋を院外に出すことへの診療報酬(処方箋料)が病院・診療所に対して認められたため、院外処方が多くなり、保険調剤を専門に行う薬局(調剤薬局)も増加していったのです。
医薬分業とかかりつけ薬局
当初は、医薬分業によって「かかりつけ薬局」が患者さんに浸透していくだろうと考えられていました。
かかりつけ薬局とは、複数の病院や診療所を受診する患者さんが1つの調剤薬局(たとえば自宅に近い場所にある、またはかかりつけの薬剤師がいる)で調剤を受け、薬や疾病に関する相談が気軽にできれば患者さんのメリットになるという考え方です。
薬局側からの視点では、その患者さんの処方箋をまとめて調剤ができるので、薬歴から重複投与や相互作用、併用禁忌などの横断的情報が判断でき、それを医師や患者さんにフィードバックできるというメリットがあります。
かかりつけ薬局の問題点とは
しかし、かかりつけ薬局にも問題点が3つあります。
1つめは、ほとんどの場合病院のそばに調剤薬局があるので、わざわざ他の薬局に行く必要が無いことが挙げられます。
2つめは、かかりつけの医師はいてもかかりつけの薬剤師はいないという場合が多いことです。
ですから、患者さんの視点では、医療機関は選んで利用しますが、調剤薬局は選ばずに利用することが多いということになります。
3つめは調剤薬局側の視点ですが、多くの病院からの処方箋を受けるとその分多くの医薬品を採用し在庫を確保しなくてはならないため、在庫管理が煩雑になってしまうことです。
これらの理由により、当初の予想に反してかかりつけ薬局は十分には浸透していません。
点分業というスタイル
現在の調剤薬局の事業スタイルの主なものは「点分業」と呼ばれるものです。
点分業では調剤薬局をクリニックや病院の門前に出店し、目の前の医療機関からの処方箋を主に調剤するといったものです。
点分業では病院と調剤薬局との連携、とりわけ医師と薬剤師が顔を合わる機会も多いため、疑義照会などのコミュニケーションが取りやすいメリットがあります。
一方で、医療機関と従属関係に陥るのではないかという意見、また、そもそも点分業するくらいなら院内調剤の方が患者さんも面倒でなくて良いのではないかという意見もあります。
いずれにしても、わたしたち薬剤師としては、点分業の状況においても、患者さんに必要とされる「かかりつけ薬剤師」となれるよう日々努力をして、現状を克服していかなくてはなりません。
最近では新しい取り組みとして、在宅医療への関与や生活習慣病の検査を取り入れている調剤薬局もあります。
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